30年近い会社員時代を経て独立

日本で起業する人の平均年齢をご存知だろうか。

日本政策金融公庫の「2020年度新規開業実態調査」によると、起業家の開業時平均年齢は43.7歳。40歳代の割合が38.1%、30歳代が30.7%と、30~40代で起業する人が多い。

名古屋市千種区で、ソフトウェア開発等を行う株式会社ディアイアールを経営する江畑 篤英さんが起業したのは56歳の時だ。
ディアイアールは、他のスタートアップではあまり見かけない「代表は若くありませんが、会社は若い」というキャッチーなコメントをホームページに載せている。

アラ還起業家の経歴は、順風満帆な会社員そのものだった。

江畑さんは京都のコンピュータ専門学校を卒業後、当時珍しかった東京のIT企業に就職した。
「学生時代は遊んでばかりで、卒業後も京都に住みたいと思っていたけれど、採用してくれたのが東京のソフトウェア会社でした」と語る江畑さんから、関西風のノリの良さを感じる。

最初の12年は技術職として工場の自動化などを担当し、その後1年半は営業職として働いた。
最初は不慣れだったコンピュータでの業務は、会社で教えてもらう中で、自分が思った通りに機械が動くことが面白くなり、自分でどんどん調べるようになった。

ただ、残業が多かったためいくら若くても体力的にきつく、何度も辞めようと思ったという。大変な仕事ではあったが、当時知り合って今でも仲良くしている方がいるくらい良い出会いに恵まれることができ、何とか仕事を続けることができた。

その後、2社目で役員として23年経営に携わる中で、いつしか自分でも起業したいと考えるようになり、一念発起して56歳で起業した。

起業早々のトラブル発生!から経験した採用の難しさ

起業してからすぐ順風満帆になったわけではなく、トラブルに遭遇することになる。
最初はとにかく働いてもらえる社員が必要だったので、能力重視で採用していた。
ベテランを採用して仕事を丸々任せていたのだが、ある日クライアントからクレームが入ってしまった。原因はベテラン社員とクライアント先の社員との、コミュニケーションに関することだった。

いくら業務に対しての技術があっても、仕事に対する考え方やコミュニケーションの取り方などが会社と合わないと、どこかで綻びが出てきてしまう。
江畑さんは「焦っちゃったかな」と振り返る。

トラブルでニッチもサッチも行かなくなってしまったとき、従業員として働いている妻だけでなく、当時大学生だった娘も手伝い家族総出で乗り切ったそう。

創業2年目を過ぎてからは、能力のみで採用することをやめた。
未経験であっても前向きに仕事に取り組んでくれそうで、「この人だ!」と思える若い人も採用するようになる。

「未経験の人を面接するときは、必ずプログラマに興味があるかを確認します。流行りだからという理由だけでは不採用です。なぜなら、仕事に興味を持っていれば、最初は教えられて仕事を覚えますが、だんだんと自分で調べてスキルを伸ばすことができるからです。逆に言うと、興味がなければ与えられた仕事しかしないでしょう」

トラブルを経験して江畑さんが導き出したのは、未経験でも若くて仕事に前のめりな人を採用して育てることだった。
創業数年で未経験者を採用し育成する方針は、誰もが決断できることではないだろう。

「人を育てないとうまくいかないということに気づきました。不器用な人は、一を聞いて十を知ることはできないかもしれません。しかし、ちょっとしたきっかけで霧が晴れることがあるんです。だから、わたしは人によって説明の仕方を変えるようにしています」

「自分が不器用なタイプだったから気持ちがわかる」と江畑さんは苦笑いした。
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